こっけのあちらこちらのこと

こっけです。自分の言いたい事を"うまく"伝えるために始めてみました。

なんだこれ。

"さあ延長30回裏。無得点状態が初回から続き、気がつけばあれよあれよと30回。スコアボードにはゼロがひたすらに並んでおります。そろそろ決着をつけたいところではありますが、ここまで試合が続くと、終わらせたくない気持ちも出てくるというのも分かります。が、試合は始まれば終わります。果たして勝利の女神はどちらに輝くのか?むしろ女神などいるのでしょうか?体力も限界と言ったところ。ピッチャー、振りかぶる力はないか?振り絞って...投げた....!!"

 

勝ち負けも引き分けもなく、終わるまでが試合のこの試合。自分で投げた球を、投げた球よりも早く走り、自分でバッターボックスに入り、打ち返す。空振りは、許されない。キャッチャーは、いない。しっかり確実に、ピッチャーの取りやすい球をを打ち返す、のも自分である。これはこれで、高等技術だ。

 

自分で投げて、自分で打つ。完全試合で延長30回。さすがにしびれを切らしたピッチャーは、壊れかけの膝への負担を覚悟の上、残りの力を振り絞り、ワインドアップから腰の回転を効かせ、その右腕を、無人のバッターボックスに向けて振り切った。かぶっていた帽子は、ずれて視界を隠す。いけ。いけ!

もちろん、投げた球を追いかけて自ら打ち返すつもりもなく、ややシュート回転したボールが、おそらくそこにあるであろう何かしらの壁に当たり、ぽとんとボールが転がり、ようやくこの試合を終わらせられる。我に返り、誰もいない、何もないグラウンドで、ただひとりでボールを投げ続け、それを自分で打ち返していたんだと。試合など、始まってもなかったのだと。ようやく気付ける。

 

 

はずだった。

 

 

"ナイスボール!!!"

使い込まれたキャッチャーミットのバシッという乾いた音と一緒に、聞こえてきたでかい声。

 

悪い眼を凝らして見ると、そこに立っていたのは、いるはずもない、土で汚れた顔を、これまた土で汚れた左袖で拭いながら笑う、自分自身であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

ばーか、取ったお前がすごいんだよ。

めちゃめちゃ悪送球だろうが。